合間縫う腑に落ちない音楽

肩透かしのカタストロフィは続く

人の欲望と意思決定について

先日、移住に関するインタビューということで、ある大手企業の方々と1時間ほどお話をした。彼らは彼らなりの仮説をもって臨んでくれていたようだが、想定通りの答えが返ってこないもどかしさを感じているようだった。

私としては訊かれたことへ自分なりに誠実に答えたつもりだが、ちょっと誠実すぎたのかもしれない。人には個々の物事に対しての考え方の違い以前に、パラダイムの違いというか個性のようなものがあって、それが異なっているとなかなか話が通じないものである。

なので、インタビュアーはさまざまな体験や思考を通じて、すべての型に対応することは難しくても、いくつかのパターンを持っておいた方がいい。少なくとも、そもそもそういうレイヤーの問題が存在することは承知しておいた方がいいと思った。

仕方のないことではあるが、彼らは線的なロジックを想定していたのだと思う。単純化していえばストーリー、起承転結のようなものだ。何かの動機があり、その考えが深まっていたものの、諸々の事情で諦めていたんだけど、なにかのきっかけでそれが実現し、今に至っているというような。

そういう説明ができればよかったのだが、実際にはそうでなかった場合、どうすればいいのか。最終的な意思決定から逆算して、そういうストーリーを捏造すればよかったのか?ハキハキしゃべる就活生のように。しかし私は、生涯で一度だけ「志望動機」を語るべき場で話を逸し、答えずじまいで終わってしまったときと同じように、そういうストーリーを捏造しないでいた。

人の欲望とは、夜空に広がる星のようなものではないだろうか。そして、何らかの現実的な意思決定を行うこととは、そんな星々の瞬きを踏まえて、現実レイヤーにいま叶えたい星座を描くような行為である気がする。

やっかいなのは、一つひとつの星は常に瞬いていることで、優先度や重要度が高くなって大きく輝いていると思えば、次の瞬間には醒めてしまって小さくしぼんでしまうこともある。特に自分の場合、この瞬きが非常に気まぐれである。子どものころからの憧れみたいなものが持続しない。すぐに幻滅し、またおかしな切り口から可能性を見出したりする。

さらに、現実的な意思決定というものは、ある時点で輝きの強い星をつないで任意の星座を描けば自動的に実現するものではなく、ヒマやカネなどの制約条件を踏まえつつ、逆に「具体的な不動産物件」といった現実によって触発されて瞬いた星をつなげて星座にするような作業とならざるをえない。

そしてそれは結局、目の前の「物件」の魅力に依存するのである。とはいっても、その魅力もモノ自体に備わっているものではなく、言うまでもなく見出した人に依る。

哲学に詳しい方であれば、たとえば唯物論あるいは実在論と観念論みたいな言葉を使って整理できるのかもしれないが…。ということで、きょうはムーンライダーズの岡田徹さん(キーボード)の訃報を聞いて悲しいので、彼の「ウェディング・ソング」を。

ゴンドラに揺られながら 寄せる波に綴る星の囁き

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ムーンライダーズ史上最悪のエロソングも岡田さんの作曲だった。歌詞は鈴木慶一。

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