合間縫う腑に落ちない音楽

肩透かしのカタストロフィは続く

「ジョリヴェは蕪」とはどういう罵倒か?

鶏と蕪(かぶ)の炒め蒸し煮。蕪を見ると、亡きピエール・ブーレーズがアンドレ・ジョリヴェを罵倒した「ジョリヴェは蕪」という暴言を思い出す。 この言葉を昔どこかで読んだときには、どういう意味だか分からなかったので、日仏辞典で蕪を調べると「navet…

三善晃「反戦三部作」と能

眠たい(by 天竺鼠 川原)。でも先週の三善晃「反戦三部作」の感想をメモしておかないと…。たった一週間前のことなのに、もうだいぶ前の話に思える。指揮をした山田和樹さんもインタビューで三善作品を「揮発する」「虹のようなもの」と表現しているけれど、…

坂本龍一「funeral」YouTube版リスト

坂本龍一が自分の葬儀で流すことを想定したプレイリスト「funeral」が公開されました。しかしSpotifyなので全曲聴けない人もいるかと思い、YouTubeで検索してリスト化しました。クソ忙しいのに何やってるんだw open.spotify.com これを機会にフランス近代音…

公衆衛生vs.個人の自由 in 鴨川

いまだSNSではコロナ対応についてあちこちで議論とも呼べないような諍いが続いているが、それは社会全体での感染者数や死亡者数を限りなくゼロに近づけようとする「公衆衛生」のスタンスと、「個人の自由」を最優先する思想とが矛盾するから起きているものが…

坂本龍一と「恥の感覚」

Photo by zakkubalan ©2022 Kab Inc きのうは歌舞伎町の109シネマズプレミアム新宿で、映画「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022+」を見てきました。4500円で山盛りのポップコーンと飲み物つき。大きめのシートはふかふかしていて左右に食べ物と飲み…

人の欲望と意思決定について

先日、移住に関するインタビューということで、ある大手企業の方々と1時間ほどお話をした。彼らは彼らなりの仮説をもって臨んでくれていたようだが、想定通りの答えが返ってこないもどかしさを感じているようだった。 私としては訊かれたことへ自分なりに誠…

大貫妙子の「新しいシャツ」と坂本龍一

もう何年も前、坂本龍一が出演するラジオ番組で大貫妙子がゲストの回を偶然聞いたことがある。そのときの大貫さんのはしゃぎっぷりとデレぶりがもう異常で、これはただならぬ関係なんだろう(あるいは、だったんだろう)と思った。 一方で、80年代以降の大貫…

なぜ安倍元首相の「国葬」は、中央線系サブカル中年にあそこまで毛嫌いされたのか?

安倍元首相の国葬が9月27日、東京・千代田区の日本武道館で行われた。これにあわせて千鳥ヶ淵をはさんだ九段坂公園には一般向け献花台が設けられ、順番を待つ列は市ヶ谷を抜けて四ツ谷を超えたという。 マスコミによる事前の世論調査では反対意見が約半数を…

とにかく短い本を書く、そして大した内容でなくても高く売る

肺がやられたせいか、横になっていると咳が出るので、しかたなく椅子に座っている。退屈なのでKIRINJIについてブログとか書いていたが、それも飽きて弱っていると、ふとコロナ前に買った本があったことを思い出した。

KIRINJI(弟脱退後)および参加作品でTop10を選ぶ

考えてみればブログの名称自体がキリンジ由来なのだから、もっとキリンジについて書いておくべきだった。とはいえ、キリンジマニアは世にたくさんいるだろうから、「これは絶対に聴いておきたいTOP10」に加え、とりあえずもう1本くらい書いて少し様子を見よ…

キリンジの「これは絶対に聴いておきたいTOP10」を作ってみる

この間、「冠水橋」についてブログを書いたら意外と読まれたので、お盆休みで暇をもてあましている人が多いのではと思い、無粋にも「これは絶対に聴いておきたいキリンジTOP10」を作ってみようと思う。異論は認める。 ちなみに背景としては、90年代の初頭に…

キリンジの「冠水橋」を見に行く

先日、2週間の試験期間を坂戸のアパートで過ごした次女が、最終日に喉が痛くなったというので、そのまま閉じこもってもらい、朝から大量の食料と水、それから着替えやお菓子や現金などを渡しにいった。そこでふと、自分にも坂戸に用事があったことを思い出し…

GoogleはYahoo!とグルになってコンテンツプロバイダから収奪するプラットフォーマーになっていないか?

中立な立場で記事の検索結果を表示している(ことが期待されている)Googleで検索したのに、Yahoo!から逃れられないって、なんかおかしくないですか?

マーケティングの暴力性も考えずに吉野家の元常務個人を「品性下劣」と批判するやつは的外れ

クビになった吉野家の元常務を擁護したい(が炎上が怖くてできない)おじさんもいると思うので代わりに書き飛ばしておくと、社会人向けのマーケティング講座における発言であったあの指摘は、マーケティングの実務を学ぼうとする人にはかなり参考になる可能…

積分の音楽:ファビオ・ルイージとN響の「チャイ5」

これは偏見かもしれないですが、日本のオーケストラも聴衆も、音楽を作品全体ではなく、その瞬間瞬間の響きだけで楽しんでいる、というか、そういう演奏がウケているような気がしてなりません。 そうすると、結局は勢いがあるとか熱い演奏とかいう評に傾くの…

変異株のトリアージ論 50歳以上の死亡者はまとめて「寿命」にしてもう数えるのはやめよう

まる3日間、家を出ていない。水曜日に買いだめをして、この1週間はトータルで30分以内しか外に出ていない。 なのに変異株の感染者が、「職場と家との往復しかしていない。あとはコンビニとスーパーくらいしか」とニュースで言っていて、思わず笑ってしまった…

立花隆さんに「知の巨人」はそぐわない

立花隆さんが亡くなっていた――。そんなニュースを見ながら、そういえば彼に関する思い出があるんだったと思い出した。歳のせいで思い出すのに時間がかかるようになってしまったし、もう二度と思い出さないかもしれないのでメモ。 福利厚生の手厚い出版社に勤…

ジャーナリストだけが知らない"問題解決"のフレームワーク序説

以前「ジャーナリストだけが知らない"問題解決"のフレームワーク」というタイトルを思いついたが、いろいろと忙しくて書くには至らなかった。 しかしこのたび新田哲史さんがSAKISIRU(サキシル)という新しいメディアを立ち上げ、 「右でも左でもなく前へ進…

タレイア・クァルテット@安養院

とても満足したコンサートだったので、あえて言葉にするのも億劫だなと思ったけど、悲しいことに記憶というものは薄れてしまい、いつしか消えてしまうものなので、備忘録として。 プロジェクトQ・第16章のバルトーク弦楽四重奏曲シリーズ(2019年2月24日)で…

「すべての1PVは等価値」と信じる人が「こたつ記事」地獄に堕ちてゆく

そういえば「こたつ記事」については、年末に「すべてのメディアはこたつ記事に行き着く」という増田(はてな匿名ダイヤリー)がバズっていた。 anond.hatelabo.jp NHKの「ねほりんぱほりん」は、これを受けて作られたのだろうか。それにしては、放送するの…

「こたつ記事」は、足を使っても頭を使わない「ゲソ記事」より劣るのか? #ねほりんぱほりん

NHK「ねほりんぱほりん」の、こたつ記事特集を見た。 www.nhk.jp 「こたつ」という言葉は、会社から一歩も出ずにネットを検索して素材をかき集めて書くネットメディアを揶揄したものだ。 「こたつ」のポジティブな側面をなぜ見ない 番組は、著作権を侵害し、…

「醜態をさらすより、早く死んだほうがいい」と言われたユーミンの今をあなたは見たのか?

2020年の印象的なできごとのひとつに、朝日新聞「論座」の暴走があった。 筆者の選定からしてジャーナリズムを放棄した活動家が目につき、事実による検証という本来のジャーナリズムを続けている同じ会社の峯村健司さんなどが気の毒になった。 そんな筆者の…

SUZURIで「putoffsystem」オリジナルアイテム販売中

GMOペパポは運営しているSUZURIでオリジナルアイテムを販売している。筆文字や画は、2000年に岩下鉄くんがいしたにまさきくん宅で書いた拝借している。 ズッキュンが複数ついているものを並べてみる。 鶴馬 手帳型スマホケース // suzuri.jp なーん Tシャツ…

「Z世代は多様性を重視している」と宣うメディア関係者への疑問

最近、ネットメディアの関係者たちが、盛んに「ダイバーシティ」(多様性)や「インクルージョン」(包摂)という言葉を使っている。 Z世でニュースに関心がある人と話すと、海外経験がある人や留学を考えている人が多くて、そういう人は国際ニュースやダイ…

ジャーナリズムとは「思い込みを事実で覆すこと」であり、活動家とは真逆のやり方のはずである。

コロナ禍の影響もあって、2020年は過去最高のPVを記録したネットメディアが多かったようだ。Zホールディングスの上期決算によると、ヤフーなどの運用型広告の売上収益は前年同期比で19.6%も増えている(下図のYDNは「Yahoo!ディスプレイアドネットワーク」…

「未来の国では、全員アマチュアの時代が来る」(ロラン・バルト)

YouTubeの醍醐味は、なんといってもアマチュアの投稿だ。 私室の一角で、他人の眼を意識せずに、たったひとりで撮った動画がいい。そして、それをひとり覗き見するようにして視聴するのは、特に楽しい。 もちろん、プロが作り込んだミュージック・ビデオを繰…

「結婚」は国家にとって愛の問題ではない

非公開になっていた記事が新DANROでいくつか再掲載されたので、久しぶり反省会をやります。 最新の記事から、“平成の終わりに浅田彰『逃走論』を読み返す”を。 danro.bar 先日、ツイッターを見ていたら、同性愛の視点から、ヘテロを前提とした「結婚」という…

ようやくアベノマスクの現物に接した際の(好意的な)感想

明日には緊急事態宣言が解除されるといわれる日に、滑り込みでマスクが届きました。文面をみると「みなさまへ」と呼びかけ、不要不急の外出を避けるよう頼んでいます。 なるほど、テレビもネットもみない人がいますし、政府から全国民に直接メッセージを伝え…

シェーンベルク「浄められた夜」は美しい音楽への別れのラブレター

きょうは37.5度の熱が出て午後は半休をとったのでもう寝ようと思いながらもアレやってなかったので起きて書くことにします。スコア(総譜)ってブックに入るんでしたっけ? #ブックカバーチャレンジ 在宅勤務も2ヶ月半を超えた今日このごろですが、今年1月に…

村井瑞枝「図で考えるとすべてまとまる」は自己啓発書より遥かに有用なビジネス書

もうすっかり時間泥棒と化している #ブックカバーチャレンジ の4日目。ところで私の対外的な肩書きは編集者ですが、本音を言うとそのような自己認識は弱い。許されるなら「会社員」と名乗りたいくらいです。 それは会社から給料をもらっているからというより…